椀田の清水
本宮市(旧白沢村)

 昔このあたりの家では、「おふるまい」をするため多くの膳や椀が必要なとき、この清水にお願いすると翌朝必要な数だけ水面に浮かんでいたという。

 これをきいた人々は、事ある毎に清水にお願いして膳や椀を借り用い、終わればただちに返納するを常としていたが、一人の不心得者が、借りた膳や椀を返さなかったため清水の怒りに觸れ、清水から大量の水が湧きあふれて、附近一帯は水びたしとなり洪水となってしまった。

 村人は近くの丘に集り、不心得者をいましめ、再びこの様な事のない様誓い、清水の怒りが治まる様お願いした。

 荒れに荒れた湧水はおさまったが、それ以来膳や椀の出る事は無くなったという。

 それからこの清水を椀出し清水、又は椀田の清水と呼ぶ様になり、又和田の地名の起因とも伝えられる。

 

 この清水の霊験については、二本松の丹羽公の時代に「明珍」という武士が、妻女の難産に困り神佛に加護を祈願したところ夢の中に、「東南方の地に龍宮より湧き出る神霊水有り、その水を与えれば安産なり。」とお告げが有った。この武士はこの清水をたずねあて、水を持ち帰り妻女に与えたところ、無事玉の様な子が生まれた。

 早速二本の旗を奉納してお礼を申し上げたという。旗には、「奉納八大龍王神、安政四巳年九月吉祥日、明珍氏」と書かれてあり、現在もこの旗は和田字久保の渡辺衣により大切に保管されている。

昭和54年5月1日白沢村文化財指定
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