鬼石(酒呑童子)
二本松市・大玉村

 原瀬村才木(現二本松市原セ)から深堀に行く街道に、度々、安達太良山に住む鬼が現れて、旅人や山仕事に行き帰る村人を襲っては、困らせていました。或る日のこと、庄屋様の家に集った村人たちは、何とかして、鬼をこらしめようと相談したのですが、名案が浮かびません。ただ時間が経つばかりでした。その時大三という若者が、「庄屋様、おらが退治に行きますだ。」と名乗り出ました。重苦しかったその場の空気が、ほっとほどけ、村人たちは一斉に大三の方に顔を向けました。一抹の不安はありましたが、急いで、酒や魚、その他の食料を集めて背負わせ、送り出しました。鬼の出たという辺りに来てみると、何やら川の方から音がしてきます。荷物をおろして、そっと行ってみると、いました。鬼が川の水を飲んでいるところです。

 

「ははん、ここのところ、人が通らないので、腹が減ってるんだな。」と思い、鬼を呼んで持ってきた物を食べさせ飲ませながら、「ここを通る人が困っているから、悪さをしないように。」と大三は静かにいい聞かせました。鬼ほ、優しい大三の話を聞いて改心し、自分と同じような形をした石を持ってきて、道の端におき山に帰っていきました。

 山に帰った鬼も、何年か経つうちに、約束も忘れ、退屈しのぎに里へおりていくと、里人がその姿に、逃げまわるのを見ておもしろくなり、だんだんといくうちに、都の近くまでたどり着きました。都の近くの大江山に住みつき、家来どもをしたがえて、町におりては、再び悪さをするようになりました。町の中を歩きまわり、盗み、人殺しなど、あまりのひどさに、町の人たちは、酒くさい赤い顔をした鬼を、酒呑童子といって恐れていました。
 

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