身の危険を感じて逃げ出す祐慶、それと知って追うお婆。近づく足音に、もはやこれまでと覚悟の祐慶は、背に負う那智社観音像を芒の根に立て、一心に唱えたお経。と、不思議や、すっと空に舞う観音像の手にした白弓から、鬼婆の胸を目がけて放たれた金色の矢、どうと倒れて息絶えるお婆──。
祐慶は、その仏像に白弓観音と命名。これが今に残る観世寺観音像です。いわては里人の手で葬られ、黒塚と刻まれた石碑も建立され、訪れる観光客が後を絶ちません。