稚児舞台秘話
二本松市(旧東和町・旧安達町)

 舞台の岩は、安倍の家紋を染め抜いた幕と紅自の幕に飾られて、一層華やかなものでした。主命によってしすしずと舞台に姿を見せた二人の稚児は、春風のはこぶ双調・平調などの妙なる雅楽の調べにのせて、花に遊ぶ蝶のように優雅に舞ったのです。この一時は、川の瀬も木々に群れ飛ぶ鳥の声も鳴りをひそめ、敵の兵も味方の兵も、天女のように舞い踊る二人にうっとりと見惚れていたのです。

 

 一人が静かに舞いを納めたとき、阿武隈川を挟んだ兵どもは東も西もなく、称賛の声をあげ、岩をたたき弦を鳴らして嵐のような拍手が両岸たくの岩山にひびきわたったのです。

 この拍手のなか稚児姿の娘二人は「敵の前に生恥をさらした。」と、相抱いたまま断崖から数丈下に渦巻く淵に身を投げ、波の中に消えていったのです。この話を伝え聞いた老媼は、悲しみのあまり娘たちが消えた淵に身を投げ、後を追ったといいます。

 八幡太郎義家はこの有様を見て「敵ながら不燗なものよ。」と、娘二人の塚を築いて懇ろに葬り、老姐の亡骸を小瀬川岸に葬り手厚い供養をしたそうです。その後、二人の塚は二子塚の宇名に残り、れ、里の人々は子供の成長を願っています。

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