船形山善応寺の天狗
二本松市

 善応寺の前の阿武隈川を渡ると、石井村の泥海という集落があります。ここにも檀家がありました。ある時舟に乗った使いの者が来て、「ざざんぼ(葬式)ができたから、来てくんちぇ。」と頼みに来たのです。使いの者は、自分が乗って来た舟に乗ってもらおうとしましたが、「わしは、まだ寺に用があるから用を済ませてから行くので、先に行っててくれ、お前より先に行くから。」というので、使いの者はしかたなく引き返していきました。ところがなんと、坊さんが先に来ていて仏様の前でお経をあげていたのです。使いの者はびっくりして「なるほど、この坊さんは、天狗様のようだ。」と感心したそうですが、それからというものますます大変な評判になったといいます。

 ※常陸坊海尊は文武両道に勝れ、源義経の重臣にして、武蔵坊弁慶と共に両雄といわれ、源氏の再興にカのあった坊さんです。1187(文治三)義経が兄頼朝と不和になり奥州に下る時、共に下って当地に来て、当山に1194年(建久5)まで、第五世として八年間在職中に、数々の霊験を現わしたため、世人は天狗の権化と、専らの評判でした。

 

 この地を去って、仙台の青麻の地に行き、後の世に青麻三光宮と奉祀されました。当山には、常陸坊大権現としてまつられ、現在の堂は、昭和十四月に建立されました。

※善応寺の入口から南へ約百メートル、道路の右側に、舟の形をした大きな石があります。いつの頃からかはさだかではないが、地域の人々は、「舟石」とよんでいます。

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